第67回カンヌ映画祭

今年もカンヌ映画祭に行ってきました。今回の完走は53本(内訳は、コンペ16本、ある視点9本、特別上映1本、監督週間15本、批評家週間5本、ACID1本、マーケット6本)。途中退出したものを含めると、12日間で60本近い作品を観ることができました。
その中でのベスト10は以下の通りです。ちなみにワースト1は文句なしに、ミシェル・アザナヴィシウス『The Search』。
受賞結果にはまあ納得ですが、個人的には『Mammy』にグランプリを、『The Tribe』にカメラ・ドールをあげたかった。

1.ユリ・ビルゲ・ジェイラン『Winter Sleep』(パルム・ドール
演劇性の強い心理劇でありながら、後半に人物達のエゴイズムが抉り出されていくまでの映画的持続と緊張感は見事。

2.ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ『Deux jour, une nuit』
一人の女性の姿しか描かないのに、現代社会、ひいては資本主義の抱える問題点までもを浮き彫りにしていく手腕にはただ感服するのみ。

3.グザヴィエ・ドラン『Mammy』(審査員賞)
正方形の画面に若い才能のパワーがはちきれんばかりに充満していて圧倒される。二つの母性を絡めつつテーマを掘り下げていく物語構築力も見事。

4.マチュー・アマルリック『La chambre blue』
緻密な脚本と言い、濃密な映像と言い、文句の付けようの無い仕上がり。80分で語りつくす編集も見事。

5.コーネル・ムンドルッツォ『White God』(ある視点賞&パルム・ドッグ)
単なる動物映画かと思わせておいて、予想もつかぬ展開と躍動感溢れる映像が圧巻。

6.Damien Chazelle『Whiplash』
今年の監督週間は全体的に低調だったが、その中で数少ない佳作がこれ。音楽映画としての完成度のみならず、物語が指導者と生徒の普遍的な関係性にまで深く切り込んでいるあたりが秀逸。

7.Myroslav Slaboshpytskiy『The Tribe』(批評家週間グランプリ)
完璧な「無声映画」。映画的冒険としては今年最大の発見。ワンシーン・ワンショットで観る者を挑発し続ける。

8.アリーチェ・ロルヴァケル『Le Meravigile』(グランプリ)
少女の成長を、映画の根源的な力を活かした映像で綴っていく様は、ビクトル・エリセさえ想起させ、映画的な叙情と瑞々しさに満ちている。

9.リューベン・オストルンド『Turist』(ある視点審査員賞)
前作『PLAY』に比べると鋭さに欠け、まとまりすぎている印象はあるものの、人間の精神が追い詰められて様をまざまざと描き出していくあたりはさすが。

10.ジャン=リュック・ゴダール『Adieu au Langage』(審査員賞)
今回もゴダール流の映像詩で、内容的にはさほど目新しさは感じなかったが、3Dの使い方は巧みで、映像の密度が増した分、強度も増し、とにかく目が疲れた。