第67回カンヌ映画祭

今年もカンヌ映画祭に行ってきました。今回の完走は53本(内訳は、コンペ16本、ある視点9本、特別上映1本、監督週間15本、批評家週間5本、ACID1本、マーケット6本)。途中退出したものを含めると、12日間で60本近い作品を観ることができました。
その中でのベスト10は以下の通りです。ちなみにワースト1は文句なしに、ミシェル・アザナヴィシウス『The Search』。
受賞結果にはまあ納得ですが、個人的には『Mammy』にグランプリを、『The Tribe』にカメラ・ドールをあげたかった。

1.ユリ・ビルゲ・ジェイラン『Winter Sleep』(パルム・ドール
演劇性の強い心理劇でありながら、後半に人物達のエゴイズムが抉り出されていくまでの映画的持続と緊張感は見事。

2.ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ『Deux jour, une nuit』
一人の女性の姿しか描かないのに、現代社会、ひいては資本主義の抱える問題点までもを浮き彫りにしていく手腕にはただ感服するのみ。

3.グザヴィエ・ドラン『Mammy』(審査員賞)
正方形の画面に若い才能のパワーがはちきれんばかりに充満していて圧倒される。二つの母性を絡めつつテーマを掘り下げていく物語構築力も見事。

4.マチュー・アマルリック『La chambre blue』
緻密な脚本と言い、濃密な映像と言い、文句の付けようの無い仕上がり。80分で語りつくす編集も見事。

5.コーネル・ムンドルッツォ『White God』(ある視点賞&パルム・ドッグ)
単なる動物映画かと思わせておいて、予想もつかぬ展開と躍動感溢れる映像が圧巻。

6.Damien Chazelle『Whiplash』
今年の監督週間は全体的に低調だったが、その中で数少ない佳作がこれ。音楽映画としての完成度のみならず、物語が指導者と生徒の普遍的な関係性にまで深く切り込んでいるあたりが秀逸。

7.Myroslav Slaboshpytskiy『The Tribe』(批評家週間グランプリ)
完璧な「無声映画」。映画的冒険としては今年最大の発見。ワンシーン・ワンショットで観る者を挑発し続ける。

8.アリーチェ・ロルヴァケル『Le Meravigile』(グランプリ)
少女の成長を、映画の根源的な力を活かした映像で綴っていく様は、ビクトル・エリセさえ想起させ、映画的な叙情と瑞々しさに満ちている。

9.リューベン・オストルンド『Turist』(ある視点審査員賞)
前作『PLAY』に比べると鋭さに欠け、まとまりすぎている印象はあるものの、人間の精神が追い詰められて様をまざまざと描き出していくあたりはさすが。

10.ジャン=リュック・ゴダール『Adieu au Langage』(審査員賞)
今回もゴダール流の映像詩で、内容的にはさほど目新しさは感じなかったが、3Dの使い方は巧みで、映像の密度が増した分、強度も増し、とにかく目が疲れた。

第66回カンヌ映画祭

今年も充実した二週間でした。カンヌで観たものにパリでの再上映等で観たものを含め、計59本の星取表とコメントです。下の写真も曇天ですが、今年はカンヌでは経験したことの無いほどの悪天候。それでも作品の方は粒揃いでした。ただ、大傑作や大発見が少なかったというのも今年の特徴でしょうか。ちなみに、今年のベスト5は、ケシシュ『LA VIE D'ADELE』、パニュ『L'IMAGE MANQUANTE』、ディアス『NORTE, THE END OF HISTORY』、ランズマン『LE DERNIER DES INJUSTES』、キレヴェレ『SUZANNE』でした。

コンペティション
ニコラス・ウィンディング・レフン『ONLY GOD FORGIVES』[☆☆]
ひたすらスタイリッシュに暴力を描こうとする作家性は認めるが、中身があまりに空虚ではどうしようもない。
・アレックス・ファン・ヴァーメルダム『BORGMAN』[☆☆1/2]
乾いたタッチでブラック・ユーモアと暴力が描かれる、如何にも作家映画としての特徴を持った魅力的なフィルム。
スティーヴン・ソダーバーグ『BEHIND THE CANDELABRA』[☆☆1/2]
見せるべきところはしっかりと見せるソダーバーグの職人技と、マイケル・ダグラスの怪演と見所は多い。
ロマン・ポランスキー『LA VENUS A LA FOURRURE』[☆☆1/2]
濃密な二人芝居を堪能。演劇性は強いものの、こうしたフィルムを軽く撮ってしまうポランスキーの余裕というか、軽さのようなものには感服する。
アレクサンダー・ペイン『NEBRASKA』[☆☆1/2]*男優賞
あまりの清廉潔白さが鼻につかなくはないものの、父子のネブラスカへの旅をシネスコの白黒画面でユーモアを交えつつ清々しく描いた、心温まる小品。
フランソワ・オゾン『JEUNE ET JOLIE』[☆☆1/2]
繊細にエロスを描く力量や、心理描写の巧みさは見事。ただ、幾つかの点、例えば「見る/見られる」という弟との関係性は後半から掘り下げられることもなく、全体として浅薄な印象が否めず惜しい作品。
アブデラティフ・ケシシュ『LA VIE D'ADELE』[☆☆☆1/2]*最高賞パルム・ドール、国際批評家連盟賞
個々のショットをどう繋ぎ、如何にテンポ良く見せるかが卓越しており、三時間を全く飽きさせず見せていく力強さに感服。若干オーソドックスに感じられる部分はあるものの、執拗なベッドシーンが必然性を持ち、感情をほとばしらせる終盤へと持っていく構成力には舌を巻く。
是枝裕和そして父になる』[☆☆1/2]*審査員賞
社会階層の違いの描き方や、それを体現した主人公のキャラクターに安易さは感じられるものの、そこから普遍的な家族愛の物語を紡ぎ出す力量は見事。ただ、本来ここで描かれるべきは父ではなく母の方であろう。
ジャ・ジャンクー『A TOUCH OF SIN』[☆☆☆]*脚本賞
いつもと同じテーマでありながら、そこに潜む暴力性を描き出した新境地。実際の複数の事件を描き、それらがそれほど結び付いていかない嫌いはあるものの、執拗な暴力シーンなど見所は多い。
・マハマト=サレ・ハルーン『GRIGRIS』[☆1/2]
義足のダンサーという設定が活かしきれておらず、脚本の弱さも目立つ。カンヌ・コンペのレベルではない。
ジェームズ・グレイ『THE IMMIGRANT』[☆☆☆]
あまりにクラシックな作りではあるが、風格ある映像で役者の演技が堪能できる安定感がさすが。
・アスガー・ファルハディ『LE PASSE』[☆☆☆]*女優賞
あらゆる大人がエゴのかたまりという徹底したニヒリズムには感服。「別離」と似た部分も多いが、社会性にまで深く切り込めなかったのは弱点。
・アマト・エスカランテ『HELI』[☆☆1/2]*監督賞
日常から不条理な暴力への唐突な連鎖をストレートに見せていく。張りつめた映像作りだが、どこかとぼけた日常性も共存し、見るべきところが多くある特異な才能。
アルノー・デプレシャン『JIMMY P.』[☆☆1/2]
後半に二人のやりとりが緊張感は増すものの、彼のこれまでの作品と比べると強度不足で中途半端に終わっていることが残念。
・Arnaud des Pallieres『MICHAEL KOHLHAAS』[☆]
物語的説明を排しつつ、一つ一つの場面の積み重ねの中で心情を見せようとするものの、それほど画面に力がある訳でもなく、作り手の独善ばかりが伝わってきて退屈極まりない。
・ジョエル&イーサン・コーエン『INSIDE LLEWYN DAVIS』[☆☆☆]*グランプリ
彼らの作品としては小粒だが、ある若者の成長物語としても猫映画としても巧みで繊細な愛すべき小品。
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ『UN CHATEAU EN ITALIE』[☆☆]
詰め込み過ぎの脚本の為に物語の焦点が定まらず、冗長さは否めず。つまらないフィルムでは無いだけに惜しい。
ジム・ジャームッシュ『ONLY LOVERS LEFT ALIVE』[☆☆1/2]
ノスタルジーやユーモアは健在ながら、あれほど愛したジャームッシュの緩慢さが冗長さへと転換している印象が否めず。

【ある視点】
・ハニ・アブ・アサド『OMAR』[☆☆1/2]*審査員賞
主人公の様々な葛藤がとても丁寧に描かれている。目新しさは無いが、しっかりとドラマを紡ぎ出す安定感がある。
ライアン・クーグラー『FRUITVALE STATION』[☆☆1/2]*将来賞
警官に射殺されるまでの24時間をきめ細かく描いたことで、事件へと向かうサスペンスとクライマックスの強度をもたらしている。先に事件を見せてしまう作為性が気にならなくはないが、それでも上手く作られている。
クレール・ドゥニ『LES SALAUDS』 [☆☆☆]
物語の背景が判りにくく、展開にも強引な部分が見受けられるが、しっかりとしたスタイル、引き締まった映像作りはさすがで、その辺の監督とは格が違うところを見せ付けた。
ラヴ・ディアス『NORTE, THE END OF HISTORY』[☆☆☆1/2]
250分のフィリピン版「罪と罰」は、稀に見る発見。長回しを多用した鮮烈なスタイルは、エドワード・ヤンを想起させる。
ヴァレリア・ゴリノ『MIELE』[☆1/2]
尊厳死を請け負う女性主人公の心情があまり丁寧に描かれず、その変化も読み取りにくい。冗長な印象が否めず。
アラン・ギロディー『L'INCONNU DU LAC』[☆☆☆]*監督賞
ゲイ映画としてのハードな部分と、ロメール的な透明感と演劇性とが違和感なく共存しているあたりは見事。
・リティー・パニュ『L'IMAGE MANQUANTE』[☆☆☆1/2]*ある視点賞
映像の残っていないクメール・ルージュの大虐殺を如何に表象すべきかを、美しいナレーションと木彫りの人形とで挑んだ傑作。パニュの作品の集大成であり、一つの頂点。
・ディエゴ・ケマダ・ディエス『LA JAULA DE ORO』[☆☆]*ある才能賞
少年達がメキシコ縦断するロードムービー。少年達のひたむきさに寄り添う視線や丁寧な作りには好感が持てるが、作家性は希薄。
・ハマド・ラスロフ『ANONYMOUS』[☆☆]*国際批評家連盟賞
イランの知識人弾圧を描くことが政治的に必要であることと、映画的に作品自体が面白いかどうかは残念ながら別。時間軸の入れ替えといった小細工も効果を発揮しているとは思えず、散漫な作品という印象が否めず。
・クロエ・ロビショー『SARAH PREFERE LA COURSE』[☆☆]
主人公の生真面目さを反映したような実直なフィルムで、良質なテレビ映画のレベルに留まる。そもそも、主人公の走っている姿が映画的に優れているとは言い難く、彼女の陸上への情熱も伝わりにくい。
レベッカ・ズロトヴスキ『GRAND CENTRAL』[☆1/2]
原発をテーマにした映画としても、不貞をテーマにした映画としても中途半端で陳腐な印象を拭えず。
・Katrin GEBBE『TORE TANZT』[☆☆]
何の救いも無く、不快指数も高いのだが、ここまでドライに暴力の為の暴力を描き切ったことを認めたくもなる。ただ、トリアー的な題材と三部構成では目新しさは感じない。
・Lucia PUENZO『WAKOLDA』[☆☆1/2]
アルゼンチンの時代の空気も伝えつつ、ナチス科学者と少女との交流を丁寧に見せる。作り手のやりたいことがしっかりと伝わってくる力量は評価できる。

【コンペ外公式上映】
クロード・ランズマン『LE DERNIER DES INJUSTES』[☆☆☆]
ユダヤ人の代表者として指導的役割を果たしてきた男のインタビューを通じ、権力の在り方や、「ショアー」とは別の側面からホロコーストのシステムをえぐりだす3時間45分の力作。
・ジェームズ・トバック『SEDUCED AND ABANDONED』[☆1/2]
カンヌ映画祭及び映画産業に関する批判精神のあまり見受けられないドキュメンタリー。

【監督週間】
アリ・フォルマン『THE CONGRESS』[☆☆]
ヴァーチャルな形での映画制作の在り方を描く際にアニメを使い、映像の実在性といった難しいテーマを扱った意欲は買いたいのだが、残念ながら失敗作。
・ラファエル・ナジャリ『A SYRANGE COURSE OF EVENTS』[☆1/2]
一人ひとりの人物や彼らのエピソードの描き方に丁寧さが描けており表層的。退屈な凡作に過ぎない。
・ティエリー・ド・ペレティ『LES APACHES』[☆]
若者達の野放図な姿をだらだらと撮り続けるばかりで緊張感も皆無で冗長極まりない。
・Basil Da Cunha『ATE VER A LUZ』[☆☆]
いわゆる郊外の若者映画のパターンから外れることはないものの、主人公を魅力的に描いたことには好印象。
・Jeremy Saulnier『BLUE RUIN』[☆☆1/2]*国際批評家連盟賞
ある男の復習劇だが、物語の背景に解り難さがある。それでも、ジャンル映画の要素を多く含みつつも作家性が強いフィルムに仕上がっていることは特筆すべき。
アレハンドロ・ホドロフスキー『LA DANZA DE LA REALIDAD』[☆☆1/2]
幾分散漫な印象は否めないが、独自の世界観が次々と繰り広げられていく様は見事。
・Franck Pavich『JODOROWSKY'S DUNE』[☆☆☆]
ホドロフスキーが未完のプロジェクトについて語りまくる。一つ一つのエピソードが面白すぎる。しかも作品が未完であったからこそ、永遠の生を得たとも言えるあたりが深い。
・Kaveh Bakhtiari『L'ESCALE』[☆☆]
ギリシャから他のヨーロッパへの出国を目指す人々に深い共感と共に寄り添ったドキュメンタリー。悪くは無いが驚きは少ない。
・Antonin Peretjatko『LA FILLE DU 14 JUILLET』[☆☆]
作家性のあるコメディでリズム感があるのでそれなりに見られるのだが、底の浅い散漫さには少々うんざり。
・アンソニー・チェン『ILO ILO』[☆☆1/2]*カメラドール
フィルム全体を覆う繊細さと確かな演出力は処女作とは思えない。感動的ではあるが浅薄な印象も拭えず。
・ギョーム・ガリエンヌ『LES GARCONS ET GUILLAUME, A TABLE!』[☆]*Art Cinema賞、SACD
あまりに普通の商業映画のコメディーで、一体なぜ監督週間でこんなフィルムが上映されるのかが理解不能
・セバスチャン・シルヴァ『MAGIC MAGIC』[☆☆1/2]
心理サスペンスと簡単には呼べないような複合的なフォルム。些細な事柄の積み重ねが主人公を精神的に追い詰めていく見せ方も上手い。
・Ruairi Robinson『LAST DAYS ON MARS』[☆☆]
SFとゾンビという二つのジャンルをしっかりと結べ付けられたことが唯一の目新しさで、あまりに二つのジャンル映画のコードに忠実すぎる展開に作家性は感じられず。
・クリオ・バーナード『THE SELFISH GIANT』[☆☆1/2]*Label Europa Cinemas賞
少年の怒りやエネルギーが瑞々しく結実した佳作。むしろ大人のエゴイズムを描き、少年には優しい視線を注ぐあたりに好感。
・セルジュ・ボゾン『TIP TOP』[1/2]
全く笑えない内輪向けの閉じた犯罪コメディー。あまりの酷さに呆れ果てる。今年のカンヌのワースト。
マルセル・オフュルス『UN VOYAGEUR』[☆☆☆]
マルセル・オフュルスが自らの半生を辿る。単なる自慢話ではなく、距離を置いた批評性を持ち合わせている。作品自体が一級の映画史的資料。
・Marcela Said『EL VERANO DE LOS PECES VOLADORES』[☆1/2]
チリの地主の娘が過ごす、何か起こりそうで何も起こらない一夏を思わせぶりに淡々と見せるだけ。
ヨランド・モロー『HENRI』[☆☆]
人物のきめ細かい描写や、時折画面から現れる詩情は良い。好感の持てる美しい作品だが、それ以上でもそれ以下でもない。

【批評家週間】
・Fabio Grassadonia & Antonio Piazza『SALVO』[☆1/2]
やりたいことは解らなくはないのだが、作為が見え透いていて、B級ギャング映画っぽい濃い作りにもついて行けず。いかにもシネフィルがモノマネで作ったという印象が否めない。
・ポール・ライト『FOR THOSE IN PERIL』[☆]
青年の喪と追憶の物語だが、見え透いた作為や安易なビデオ映像の使用にはうんざりさせられた。
・セバスチャン・ピロット『LE DEMANTELEMENT』[☆☆]
娘を助ける為に家と農場を売ることにする初老の男。しっかりと作られた美しい映画だが作家性は弱く、良く出来たテレビ映画という印象は否めず。
ダヴィッド・ペロー『NOS HEROS SONT MORTS CE SOIR』[☆1/2]
アルジェリア帰還兵のプロレスラーの姿を、社会背景をからめつつ白黒画面でしっかりと見せるのだが、如何せんテンポやスピード感に欠けていて冗長。
・Agustin Toscano & Ezequiel Radusky『LOS DUENOS』[☆☆]
地主と使用人という対照が紋切型にしか描かれないことには目新しさは感じられず。
・Yury Bykov『THE MAJOR』[☆1/2]
展開にあまりにリアリティが無く、ドラマの焦点が定まらないままに物語を進めようとすることに無理がある。
カテル・キレヴェレ『SUZANNE』[☆☆☆]
自由奔放に生きる女主人公をサラ・フォレスティエが好演。一つ一つのショットが丁寧に無駄なく結び付き、引き締まった90分間を作り上げていく様は見事。
・ヤン・ゴンザレス『LES RENCONTRES D'APRES MINUT』[☆1/2]
エキセントリックな人たちが集う一夜をいかにもアートっぽく描いていて独善的な作品という印象は否めず。

第65回カンヌ映画祭・星取表

ミヒャエル・ハネケの『Love』がパルム・ドールを受賞して、今年のカンヌ映画祭が終了しました。今回は期間中に合計58本の映画を見ることが出来ました。(追記:パリでの再上映と公開済みの作品5本を追加したので、計63本になっています。)

コンペティション部門】
ウェス・アンダーソン『Moonrise Kingdom』(アメリカ)[☆☆☆]
ジャック・オーディアール『De rouille et d'os』(フランス)[☆☆☆]
アラン・レネ『Vous n'avez encore rien vu』(フランス)[☆☆☆]
レオス・カラックス『Holy Motors』(フランス)[☆☆☆☆]
ケン・ローチ『The Angel's Share』(イギリス)[☆☆1/2]審査員賞
デヴィッド・クローネンバーグ『Cosmopolis』(カナダ)[☆☆]
リー・ダニエルズ『The Paperboy』(アメリカ)[☆☆]
アンドリュー・ドミニク『Killing Them Softly』(オーストラリア)[☆1/2]
・マッテオ・ガローネ『Reality』(イタリア)[☆☆1/2]グランプリ
ミヒャエル・ハネケ『Love』(オーストリア)[☆☆☆☆]最高賞パルムドール
ジョン・ヒルコート『Lawless』(アメリカ)[☆☆]
・セルゲイ・ロズニツァ『In the Fog』(ウクライナ)[☆☆]国際批評家連盟賞
・クリスチャン・ムンギウ『Beyond the Hills』(ルーマニア)[☆☆☆]脚本賞・女優賞
ジェフ・ニコルズ『Mud』(アメリカ)[☆☆☆]
・カルロス・レイガダス『Post tenebras lux』(メキシコ)[☆☆☆1/2]監督賞
ホン・サンス『In Another Country』(韓国)[☆☆☆1/2]
イム・サンス 『Taste of Money』(韓国)[☆1/2]
ウルリッヒ・サイドル『Paradise:Love』(ドイツ)[☆☆☆]
【ある視点部門】
・ファン・アンドレス・アランゴ『La Playa』(コロンビア)[☆☆]
・カトリーヌ・コルシニ『Trois Mondes』(フランス)[1/2]
グザヴィエ・ドラン『Laurence Anyways』(カナダ)[☆☆1/2]ある視点女優賞
・ミシェル・フランコ『Despues de Lucia(After Lucia)』(メキシコ)[☆☆☆]ある視点グランプリ
ジョアキム・ラフォーズ『Aimer a perdre la raison(Our Children)』(ベルギー)[☆☆]ある視点女優賞
・ダルジャン・オミルバエフ『Student』(カザフスタン)[☆☆1/2]
・パブロ・トラペロ『Elefante Blanco』(アルゼンチン)[☆1/2]
・シルビィ・ベレイド『Confession of a Child of the Century』(フランス)[1/2]
ロウ・イエ『Mystery』(中国)[☆1/2]
ベン・ザイトリン『Beasts of the Southern Wild』(アメリカ)[☆☆☆1/2]カメラ・ドール/国際批評家連盟賞
・Aida Begic『Djeca(Children of Sarajevo)』(ボスニア・ヘルツェゴビナ)[☆☆]ある視点特別賞
・Adam Leon『Gimme the Loot』(アメリカ)[☆☆☆]
・Gilles Bourdos『Renoir』(フランス)[☆]
【コンペ外招待作品】
クロード・ミレール『Therese Desqueyroux』(フランス)[☆]
ベルナルド・ベルトルッチ『IO E TE』(イタリア)[☆☆☆1/2]
【特別上映作品】
ファティ・アキン『Der Mull im Garten Eden』(ドイツ)[☆☆1/2]
・レーモン・ドゥパルドン『Journal de France』(フランス)[☆☆☆☆]
ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス『A musica segundo Tom Jobim』(ブラジル)[☆☆☆]
・ゴンザロ・トバル『Villegas』(アルゼンチン)[☆☆]
アピチャッポン・ウィーラセタクン『Mekong Hotel』 (タイ)[☆☆1/2]
【監督週間】
・Pablo Stoll Ward『3』(ウルグアイ)[☆1/2]
・ブルノ・ポダリデス『Adieu Berthe』(フランス)[☆☆]
・Elie Wajeman『Alyah』(フランス)[☆☆]
・ノエミ・ルヴォヴスキ『Camille redouble』(フランス)[☆☆☆1/2]
・Yulene Olaizola『Fogo』(メキシコ)[☆]
・William Vega『La Sirga』(コロンビア)[☆☆]
・Nicolas Wadimoff『Operation Libertad』(スイス)[☆1/2]
・Rachid Djaidani『Rengaine(Hold back)』(フランス)[☆☆1/2]国際批評家連盟賞
ミシェル・ゴンドリー『The We and the I』(アメリカ)[☆☆☆]
・Pablo Larrain『No』(チリ)[☆☆☆]
・Ben Wheatley『Sightseers』(イギリス)[☆☆]
【批評家週間】
・Antonio Mendez Esparza『Aqui y alla』(メキシコ)[☆☆☆]批評家週間グランプリ
・Louis-Do de Lencquesaing『Au galop』(フランス) [☆]
・Meni Yaesh『Les Voisins de Dieu』(イスラエル) [☆☆]
・David Lambert『Hors les murs』(ベルギー)[☆☆]
・Alejandro Fadel『Los Salvajes』(アルゼンチン)[☆]
・Ilian Metev『Sofia’s Last Ambulance』(ブルガリア) [☆1/2]
・Alice Winocour『Augustine』(フランス)[☆☆1/2]
・サンドリーネ・ボネール『J’enrage de son absence』(フランス)[☆]
【ACID】
・Ami Livne『Sharqiya』[☆☆]
・Namir Abdel Messeeh『La Vierge, les coptes et moi』[☆1/2]
・Hicham Lasri『The End』[☆☆]
・Nathan Nicholovitch『Casa Nostra』[☆]
・Fleur Albert『Stalingrad Lovers』[1/2]
【マーケット】
・ブリランテ・メンドーサ『Captive』[☆1/2]

第65回カンヌ映画祭・公式ラインナップ

来月のカンヌ映画祭の公式上映のラインナップが発表されました。
コンペにこれだけのビッグ・ネームを揃えられるのはカンヌ以外には有り得ませんね。三大映画祭とは言うけれど、ベルリン、ヴェネチアを圧倒しているのは言うまでもありません。個人的な注目は、レネ、カラックス、ダニエルズ、ガローネ、ニコルズ、そしてレイガダスあたりでしょうか。ローチ、ハネケ、キアロスタミはもうカンヌのコンペには必要無いと思います。

コンペティション部門】
ウェス・アンダーソン『Moonrise Kingdom』オープニング作品(アメリカ/1h34)
ジャック・オーディアール『De rouille et d'os』(フランス/1h55)
アラン・レネ『Vous n'avez encore rien vu』(フランス/1h55)
レオス・カラックス『Holy Motors』(フランス/1h50)
ケン・ローチ『The Angel's Share』(イギリス/1h46)
デヴィッド・クローネンバーグ『Cosmopolis』(カナダ/1h45)
リー・ダニエルズ『The Paperboy』(アメリカ/1h41)
アンドリュー・ドミニク『Killing Them Softly』(オーストラリア/1h40)
・マッテオ・ガローネ『Reality』(イタリア/1h50)
ミヒャエル・ハネケ『Love』(オーストリア/2h06)
ジョン・ヒルコート『Lawless』(アメリカ/1h55)
アッバス・キアロスタミ『Like Someone in Love』(イラン/1h49)
・セルゲイ・ロズニツァ『In the Fog』(ウクライナ/2h07)
・クリスチャン・ムンギウ『Beyond the Hills』(ルーマニア/2h35)
・ユーズリ・ナズララ『After the Battle』(エジプト/2h06)
ジェフ・ニコルズ『Mud』(アメリカ/2h15)
・カルロス・レイガダス『Post tenebras lux』(メキシコ/1h40)
・ウォルター・サレス『On the road』(ブラジル/2h20)
ホン・サンス『In Another Country』(韓国/1h28)
イム・サンス 『Taste of Money』(韓国/1h53)
ウルリッヒ・サイドル『Paradise:Love』(ドイツ/2h00)
・トーマス・ヴィンターバーグ 『The Hunt』(デンマーク/1h46)

【ある視点部門】
・アシム・アルワリア『Miss Lovely』初長編(インド/1h50)
・ファン・アンドレス・アランゴ『La Playa』初長編(コロンビア/1h30)
・ナビル・アユチ『God's Horses』(モロッコ/1h55)
・カトリーヌ・コルシニ『Trois Mondes』(フランス/1h40)
・ブランドン・クローネンバーグ『Antiviral』初長編(カナダ/1h50)
・オムニバス(ベニチオ・デル・トロエリア・スレイマンギャスパー・ノエローラン・カンテ他)『7 Days in Havana』(2h05)
・ブノワ・ドゥレピーヌ、ギュスタブ・ケルベル『Le Grand Soir』(フランス/1h32)
グザヴィエ・ドラン『Laurence Anyways』(カナダ/2h41)
・ミシェル・フランコ『Despues De Lucia』(メキシコ/1h54)
ジョアキム・ラフォーズ『Aimer A Perdre La Raison』(ベルギー/1h54)
・ダルジャン・オミルバエフ『Student』(カザフスタン/1h30)
・ムサ・トーレ『La Pirogue』(セネガル/1h27)
・パブロ・トラペロ『Elefante Blanco』(アルゼンチン/2h00)
・シルビィ・ベレイド『Confession of a Child of the Century』(フランス/2h05)
若松孝二『11.25自決の日・三島由紀夫と若者たち』(日本/2h00)
ロウ・イエ『Mystery』(中国/1h30)
ベン・ザイトリン『Beasts of the Southern Wild』初長編(アメリカ/1h32)

【コンペ外招待作品】
クロード・ミレール『Thérèse Desqueyroux』クロージング上映 (フランス/1h50)
ベルナルド・ベルトルッチ『IO E TE』(イタリア/1h37)
・エリック・ダーネル、トム・マクグラス『Madagascar 3』(アメリカ/1h30)
フィリップ・カウフマン『Hemingway & Gellhorn』(アメリカ/2h34)

【ミッドナイト・スクリーニング】
ダリオ・アルジェント『Dario Argento's Dracula』(イタリア/1h46)
・三池 崇史『愛と誠』(日本/2h14)

【65回記念上映】
・ジル・ジャコブ、サミュエル・フォーレ『Une journée particulière』(フランス/53 mn)

【特別上映作品】
ファティ・アキン『Der Müll im Garten Eden』(ドイツ/1h25)
・ローラン・ブーズロー『Roman Polanski: a film memoir』(アメリカ/1h34)
・ケン・バーンズ、サラ・バーンズ、デヴィッド・マクマホン『The Central Park five』(アメリカ/2h00)
・セバスチャン・リフシッツ『Les invisibles』(フランス/1h55)
・クローディーヌ・ヌーガレ、レーモン・ドゥパルドン『Journal de France』(フランス/1h40)
ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス『A musica segundo Tom Jobim』(ブラジル/1h30)
・ゴンザロ・トバル『Villegas』初長編(アルゼンチン/1h36)
アピチャッポン・ウィーラセタクン『Mekong Hotel』 (タイ/1h01)

第65回カンヌ映画祭・公式ポスター

今年のカンヌ映画祭は5月16日から27日に開催されます。
既に審査員長をナンニ・モレッティが務めることと、今年没後50年のマリリン・モンローをあしらった公式ポスターが発表されています。注目のラインナップ発表は、例年開幕の一ヶ月前なので4月中旬でしょう。
[3月9日の追記]オープニング作品はウェス・アンダーソンの『MOONRISE KINGDOM』に決定。ラインナップの発表は4月19日の予定。

過去三年間のカンヌ映画祭報告のリンクはこちら。
『映画が生まれる場所−第64回カンヌ映画祭報告−』
『映画を信じるために−第63回カンヌ映画祭報告−』
『波の行方−第62回カンヌ映画祭報告−』

第64回カンヌ映画祭・ラインナップ

transparence2011-05-01

もう一年が経ってしまいました。もうすぐカンヌ映画祭です。
今年も沢山映画を観に行ってきます。とりあえず公式上映作品のご紹介。
  *  *  *
コンペティション
ペドロ・アルモドバル『The Skin I Live In』(スペイン)
・ベルトラン・ボネロ『House of Tolerance』(フランス)
・アラン・カヴァリエ『Pater』(フランス)
・ヨセフ・シダー『Footnote』(イスラエル)
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン『Once Upon a Time in Anatolia』(トルコ)
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ『Boy With a Bike』(ベルギー)
アキ・カウリスマキ『Le Havre』(フィンランド)
河瀬直美朱花の月』(日本)
・ジュリア・リー『Sleeping Beauty』(オーストラリア)
・マイウェン『Polisse』(フランス)
テレンス・マリックツリー・オブ・ライフ』(アメリカ)
・ラデュ・ミヘイレアニュ『The Source』(ルーマニア)
三池崇史『一命』(日本)
ナンニ・モレッティ『We Have a Pope』(イタリア)
リン・ラムジー『We Need to Talk About Kevin』(イギリス)
マルクス・シュラインツアー『Michael』(オーストリア)
・パオロ・ソレンティーノ『This Must Be the Place』(イタリア)
ラース・フォン・トリアーメランコリア』(デンマーク)
ニコラス・ウィンディング・レフン『Drive』(デンマーク)
・ミシェル・アザナビシウス『The Artist』(フランス)
【ある視点】
ガス・ヴァン・サント『レストレス Restless』(アメリカ)
・Bakur BAKURADZE『The Hunter』(ロシア)
アンドレアス・ドレセン『Halt auf freier Strecke』(ドイツ)
・ブリュノ・デュモン『Hors Satan』(フランス)
ショーン・ダーキン『Martha Marcy May Marlene』(アメリカ)
・ロベール・ゲディギャン『Les Neiges du Kilimandjaro』(フランス)
・Oliver HERMANUS『Skoonheid』(南アフリカ)
ホン・サンス『北村方向 The Days He Arrives』(韓国)
・クリスチャン・ヒメネス『Bonsai』(チリ)
・エリック・クー『Tatsumi』(シンガポール)
キム・ギドクアリラン Ariang』(韓国)
・ナディーン・ラバキー『Where Do We Go Now?』(レバノン)
・カタリン・ミツレスク『Loverboy』(ルーマニア)
・ナ・ホンジン『黄海 Yellow Sea』(韓国)
・ヘラルド・ナランホ『Miss Bala』(メキシコ)
・Juliana ROJAS, Marco DUTRA『Hard Labor』(ブラジル)
・ピエール・ショレール『The Minister』(フランス)
・アイヴァン・セン『Toomelah』(オーストラリア)
・Joachim TRIER『Oslo, August 31st』(ノルウェイ)
アンドレイ・ズビャギンツェフ『Elena』(ロシア)
【コンペ外上映作品】
ウディ・アレン『Midnight in Paris』(アメリカ)※オープニング上映 
クリストフ・オノレ『Les Bien-aimés』(フランス)※クロージング上映
・グザビエ・ランジュ『The Conquest』(フランス)
ジョディ・フォスター『The Beaver』(アメリカ)
ロブ・マーシャルパイレーツ・オブ・カリビアン・生命の泉』
  *  *  *
相変わらず凄いラインナップだと思う反面、目新しさが全く感じられないのも確かな事実。しかも、ダルデンヌ兄弟ナンニ・モレッティがコンペで、ガス・ヴァン・サント、ブリュノ・デュモン、キム・ギドクが「ある視点」というのもよく判らない。もちろん、常連達の新作にも興味はあるが、映画祭はあくまでも「発見の場」であると思うので、期間中はコンペよりも「ある視点」と平行部門の「監督週間」中心に観て回るつもり。

2010年カンヌ映画祭報告

今年もカンヌ映画祭に行ってきました。
今回が4回目のカンヌでしたが、今回の受賞結果が一番納得のいくものでした。アピチャッポンのパルム・ドールはもちろん、グザヴィエ・ボーヴォワのグランプリ、そして何といってもマチューの監督賞。審査員賞か女優のアンサンブル受賞くらいかと思っていただけに、これは嬉しかったです。

各作品の短評はTwitterでつぶやいたので、興味のある方は過去のツイート(http://twilog.org/bazinien)をご覧下さい。ここではマイベストの10本だけをまとめておきます。

1.ミケランジェロ・フランマルティーノ『四つのいのち(Le Quattro volte)』(監督週間)[☆☆☆☆]

今年最大の発見。日本の配給会社で興味を持っているところもあると聞くので、近いうちに日本でも上映されるでしょう。キャメラは時に奇跡を作り出す。そうした有り得ない出来事が生成する場面を捉える監督こそ、特権的な才能を持った映画作家なのだろう。リュミエール的映画の奇跡が味わえる驚くべき傑作。
イタリア語の公式HP→http://www.lequattrovolte.it/
2.マノエル・デ・オリヴェイラ『The Strange Case of Angelica』(ある視点)[☆☆☆☆]
映画とは過ぎ行く時間を記録し、死者をも甦らせる力を持つ。軽やかにそうした映画の恐ろしさを表象し、メリエスに回帰してしまうオリヴェイラは映画史そのものである。恐るべき傑作
3.グサヴィエ・ボーヴォワ『Des Hommes et des Dieux』(コンペ)[☆☆☆1/2]
グランプリ受賞。1996年にアルジェリアでフランス人修道士7人が誘拐された事件を映画化。ブレッソンロッセリーニの系譜に連なる「不屈の精神(PERSEVERANCE)」を描いた、打ち震える傑作。
4.マイク・リー『Another Year』(コンペ)[☆☆☆1/2]
中年夫婦を軸に、登場人物達の感情の機微を季節の移り変わりと共に的確に描いていく。一見すると穏やかで優しいフィルムの様でいて、実際は計算し尽くされた騙し絵の様な恐るべきフィルム。パルムは逃したが、彼の代表作の一つになるだろう。
5.マチュー・アマルリック『Tournée』(コンペ)[☆☆☆1/2]
見事、監督賞受賞。期待に違わぬ素晴らしい出来。人物一人一人の感情の機微を丁寧に掬い取り、奥深い後味を残す。カンヌのコンペとしてはスケール不足は否めないかもしれないが、ユーモアと優しさと愛に溢れた佳作。
6.アピチャッポン・ウィーラセタクン『Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives』(コンペ)[☆☆☆]
アピチャッポン・ワールド全開。素晴らしいイマジネーションの広がりと映画的体験。彼の作品の中では比較的とっつき易いものだと思うが、これにパルムドールをあげたティム・バートンは本当に偉い。
7.ディエゴ・レルマン『The Invivible Eye』(監督週間)[☆☆☆]
学校という内部で生きる女性の孤独と抑圧された性を、軍事独裁末期の閉塞した社会という外部と通低させつつ描き出す巧みさに舌を巻く。『ある日、突然』から数年で、これほど重厚で成熟した作品を撮れる力量に感服。
8.オリヴィエ・アサイヤス『Carlos』(コンペ外)[☆☆☆]
五時間半を全く飽きさせることの無い見事な出来。惜しむらくは、カルロスが起こした様々な事件の経緯を辿ることがメインになってしまい、彼の人物像までを丁寧に描ききれなかった嫌いがあることか。五時間半でも足りないということか。
9.Michael Rowe『Año bisiesto』(監督週間)[☆☆☆]
今年の監督週間はなかなかのセレクションだったと思うが、中でも異彩を放っていたのが、メキシコ映画の二本。孤独な女性のエスカレートする性欲を描いたこのフィルムはカメラドールを受賞。もう一本のJorge Michel Grau『Somos lo que hay』は、父親を失って途方にくれる食人家族の話。二本とも展開には唖然とさせられるのだが、人物描写が丁寧だし、画面作りも才気が感じられて引き込まれる。やはりこれはレイガダスが拓いた地平なんだろうか。
10.グレッグ・アラキ『Kaboom』(コンペ外)[☆☆☆]
ドラッグ入りのクッキー食べちゃうあたりは相変わらずなのだが、全編を通してスピード感や画面作りのセンスの良さが光り、文句無しに面白い。ある意味『キッスで殺せ』のリメイク。