transparence2006-08-18

ミシェル・ゴンドリー『眠りの科学(The Science of Sleep)』(2006)[☆☆1/2] @Gaumont Parnasse
バカンス・シーズンも間もなくお終い(今年のパリの夏は七月の猛暑と八月の冷夏の落差が激しかった)。夏の間は低調な新作映画の公開だが、秋の公開ラッシュに向けて、目ぼしい作品が出始めている。今週はこの『眠りの科学』とマイケル・マンマイアミ・バイス』、来週はケン・ローチ『The Wind that Shakes the Barley』(カンヌ・パルムドール)、二コール・ガルシア『Selon Charlie』(カンヌ・コンペ)、シャマラン『レディ・イン・ザ・ウォーター』に『風の谷のナウシカ』のフランス劇場初公開(ポスターが町中で目に付く)、再来週はブルーノ・デゥモン『Flandres』(カンヌ・グランプリ)といった具合。
ミシェル・ゴンドリーの新作は、三作目にして初の「フランス映画」。メキシコからパリにやって来た若者というのは、ガエル・ガルシア・ベルナルにははまり役。彼が思いを寄せる隣人がシャルロット・ゲンズブール。アラン・シャバやミュウ=ミュウといったベテランが脇を固める。今回は初めてゴンドリー自身が脚本も手掛け(『ヒューマンネイチュア』と『エターナル・サンシャイン』はチャーリー・カウフマン)、撮影に使ったアパートは、ゴンドリーが一時住んでいた所だという。色々な意味で「ゴンドリー色」で満たされたフィルムだと言う事ができる。
主人公の夢や妄想を自由にコラージュしていくやり方だけに、物語の整合性を追求することは止め、ただ誌的なエピソードの連なりを楽しむのが、このフィルムを楽しむ上での正しい態度だろう。良くも悪くも長大なミュージック・ビデオを見ている気にさせられるが、デジタル技術に手仕事の味わいを加味しながら一つの「世界」を作り上げていく力量は認めるべき。ただし、それはあくまでも楽天的な「ゴンドリー・ワールド」に留まるレヴェルの話であって、これからの映画を見通すような「映画観」は皆無である気がしてならない。