transparence2006-05-10

スティーブン・ソダーバーグ『Bubble』(2005)[☆☆1/2] @MK2 Odeon
Christoph Hochhausler『L'Imposteur(Falscher Bekenner)』(2004)[☆☆1/2] @MK2 Hautefeuille
ソダーバーグの新作は、上映時間1時間13分、素人俳優を用いDVで撮られた低予算作品。オハイオの人形工場を舞台に、三角関係と殺人事件を通じて、日常の裂け目から浮かび上がる人間の本性を巧みに掬い上げている。本職はケンタッキー・フライドチキンの店員だというマーサ役の女性が素晴らしい。アメリカでは独立系劇場33館のみで公開され、ほぼ同時にケーブルテレビ放映とDVDが発売されたことで話題になった。そうした映画を取り巻く新たな環境を利用することで、ソダーバーグはこのフィルムで監督・撮影・編集を同時に手掛け、ハリウッドでは本来困難な「作家映画」を作り上げている。
フランスの映画批評は、一昨年あたりから新しい世代のドイツ映画の潮流を「ジャーマン・ヌーヴェル・ヴァーグ(Nouvelle vague allemande)」などと呼んでしばしば取り上げている。1972年生れのHochhauslerもその一人で、長編第二作目『L'Imposteur』は昨年のカンヌ「ある視点」部門で上映された。ブルジョワ家庭の末っ子で求職中の18歳が主人公。日常の倦怠と閉塞感の中で、彼が幻想や強迫観念にとらわれていく様が静謐なトーンで描かれていく。豊かな才能を感じさせる一方で、『Voyage scolaire』(Henner Winckler)といった同世代監督のドイツ映画と主題・スタイルともに似通っていて、食傷気味の感は否めない。