2006年11月の観た&聴いた

SCOOP

久々の更新になりました。11月のパリは異常なほどの暖かさで過ごしやすかったのですが、12月に入って街のあちこちでクリスマスのイルミネーションは始まるのに合わせるように、徐々に寒くなってきました。
ここ最近はとても忙しくしており(ゼミ発表やアルバイトなど)、更新も滞ってしまいました。学位論文の執筆にも本格的に取り組む必要に迫られており、今後もこの状態は続くと思われます。そこでこれからは、パリでの映画、コンサート、オペラ等の記録は月に一度、まとめて更新しようと考えています。その他の身の回りの出来事などは不定期に記していこうと思っていますが、更新のペースはかなり落ちると思われるので、御了承ください。

という訳で、11月のまとめです。今月はオペラ・バレエが無く、映画も僅か一本のみ(観るべきものは沢山あったのに・・・)と、多忙が恨めしかったのですが、ただ、オーケストラ公演だけは充実していました。

《映画》
ウディ・アレン『Scoop』(2006)[☆☆1/2」@MK2 Odeon
傑作『マッチ・ポイント』に続くウディ・アレンの新作は、今回もスカーレット・ヨハンソンが主演でロンドンが舞台。ミステリー仕立てでありながら、前作のような「陰」はなくなり、軽いタッチの小品に仕上がっている。
《コンサート》
・シルヴァン・カンブルラン(指揮)&南西ドイツ放送響(バーデン・バーデン&フライブルクSWR交響楽団)(11月18日 @サル・プレイエル
カンブルランとその手兵による、19世紀(ドビュッシー)、20世紀(メシアンエドガー・ヴァレーズ)、21世紀(ファーニホウ)を横断する意欲的な演奏会。現代音楽の退屈さとは無縁な、ヴァラエティに富んだプログラムと、オケの高い機能性を満喫できただけに、お客の入りの悪さが悔やまれる。
クリスティアンティーレマン(指揮)&ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団(11月18日 @シャンゼリゼ劇場
注目のコンビによるブルックナーの7番。楽章を追うごとにティーレマンは調子を上げていき、音の大伽藍を作り上げていく。ドイツ音楽の極致を堪能させてくれた、今月のコンサートのベスト1。
・ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ(指揮)&国立パリ管弦楽団(11月22日 @サル・プレイエル
生誕百年に合わせて、パリでも数多くのショスタコ・プロの演奏会が行われているが、間違いなくこれはその白眉。作曲家の弟子でもあるロストロポーヴィッチの、深い思い入れのこもった指揮に、オケは最高の演奏で応えていた。
・エマニュエル・クリヴィヌ(指揮)&ヨーロッパ室内管弦楽団(11月25日 @サル・プレイエル
前半はマリア・ジョアン・ピリスソリストに迎えて、モーツァルト(ピアノ協奏曲27番)。個人的には、アンコールで演奏されたベートーヴェンのピアノ協奏曲第四番最終楽章の方が印象に残った。メインのブラームス交響曲第二番)では、このオケの名人芸を堪能。クリヴィヌの職人的な手堅い指揮には好感を持った。
・ジャン=クロード・カザドシュ(指揮)&国立リール管弦楽団(11月28日 @サル・プレイエル
オケ創設(1976年)以来の名コンビが、マーラーの三番を引っ提げてのパリ来演。トゥルーズにせよ、リヨンにせよ、フランスの地方オケにはそれぞれに特色と底力がある。
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(11月29日 @シャンゼリゼ劇場
ハイレベルなオーケストラ公演の続いた11月だったが、最後を飾ったのがウィーン・フィルのパリ公演。パリでの活躍も目覚しいパーヴォ・ヤルヴィだが、ウィーン・フィルの指揮台に上るのはこれが初めて。にも関わらず、モーツァルト(「魔笛」序曲)、ハイドン(「ロンドン」)、シューベルト(「グレイト」)という王道中の王道のプログラムが並んだことには驚かされた。結果的に、それが彼の丁寧で細やか音楽作りという特徴を良く表していたし、オケから豊かな音色をも引き出していた。だからと言って大人しい音楽では決してなく、シューベルトで聴かせた構築力のあるスケールの大きな音楽には感銘を受けた。アンコールで演奏されたシベリウスはまさに絶品で、近い将来、このコンビで北欧ものの名演が生れるであろうことを予感させた。