カンヌ映画日誌(1)

transparence2007-05-16

いよいよカンヌ映画祭初日。この日の公式上映は夜のウォン・カーウェイ『My Blueberry Nights』のみだが、マーケットの方では早朝より多くの上映が行われている。午前中に滞在先のアパートの入居手続き、映画祭マーケットのバッジ受け取りや打ち合わせをこなし、午後からメイン会場となるPalais des Festivalsへ。ここにはコンペ作品が上映されるリュミエール、「ある視点」のドビュッシー、コンペの再上映やカンヌ・クラシックで使われる、バザン、ブニュエル、それに今年は60周年記念の上映室(一見仮設テントのようだが内部はちゃんとした映画館)といった劇場がある。これにマーケット用の16の小規模上映スペースが加わり、映画祭期間中は常時大量の映画が流されている。初日だけに、完全に御上りさん状態。まずは、上映スペースを覗いたり、各映画会社のブースが並ぶあたりを歩き回って、この映画祭がどのように動いているかを把握することに努める。それから二本の映画を観て、打ち合わせを兼ねた食事会で初日は終了。
・ヤン・スヴェラーク『Empties』(2007)[☆☆](マーケット)
『コーリャ、愛のプラハ』のヤン・スヴェラーク最新作。『コーリャ』同様、実父であるズディニェク・スヴェラークが脚本に協力し、主演もしている。スーパーマーケットで働く元教師が出会う様々な人間模様が丁寧に描かれる、心温まる「普通に良い映画」。
スティーヴ・ブシェミ『Interview』(2007)[☆☆☆](マーケット)
性格俳優として100本以上の作品に出演しているスティーヴ・ブシェミの監督・主演作品。政治記者がTVの人気女優にインタビューするというタイトル通りのストーリー。原案はテオ・ファン・ゴッホの2003年の同名フィルム。「演じること」をめぐる仕掛けが幾重にも巧妙に張り巡らされ、会話の妙と共に濃密な室内劇が展開される。確かに演劇的要素は強いのだが、役者の顔の切り取り方や、カット割が映画的なリズムを創り出している。