カンヌ映画日誌2009・第1日

いよいよ今日から映画祭が開幕。
一年が経つのは早いよなあと思いつつ、一年ぶりにカンヌの街を歩いていると、寿司屋(絶対に日本人経営ではないであろう)が更に増えていたり、ホテルの近くに深夜12時まで開いているスーパーができていたりして、それなりに時の流れも感じる。

朝食後に、メイン会場にバッジを取りに行って本格始動。とは言っても、初日はオープニング作品以外に公式上映は無いので、ひたすら観まくることもなく、マーケット上映を何本か回るのみ。ティム・ロス主演のファンタジー映画(自然描写など映像はまずまずだが、物語運びにおいていまいち焦点が絞りきれておらず、全体的に中途半端)を観てから、日本でも『フリークスも人間も』が公開されたことのあるアレクセイ・バラバノフの作品を30分ほどのぞく。そしてパレを出て、市内の映画館でのWILD BUNCH社のプローモーション上映へ。ここでは、二十数本の予告編や本編の一部が次々と上映されたのだが、なかなかレベルが高い。ただ、なんと言っても今回のお目当ては、ゴダールの新作。『SOCIALISME』というタイトルで、エジプト、ナポリオデッサの映像と共に、歴史や政治が語られていく手法はゴダールならではのもの。

その後は、今年のベルリン映画祭の出品作を二本。GENERATION部門に出ていたスウェーデン映画『THE GIRL』(Fredrik Edfeldt)[☆☆]は、夏休みに一人家に取り残された女の子の物語。透明感のある映像や、大人びた少女の性への目覚めや周囲の大人たちとの軋轢を描く様は、全体的に丁寧で好感は持てるのだが、これという発見も無く、予想の範囲内に留まっている。

そしてもう一本が、今年グランプリにあたる金熊賞を受賞したペルー映画『The Milk of Sorrow』(Claudia Llosa)[☆]。圧政時に母親が受けた暴行の為に、心に病を負った女性が主人公。テーマは重く、主人公はひたすら暗いのだが、それらがきちんと説明されることはなく、彼女の苦悩ばかりが描かれる。そこにはペルーの政治的背景が深く関わっているのだろうが、それらを知らなければ映画の良さがわからないというのはおかしな話だろう。映像的にもペルーの圧倒的な風景にやたらと頼るばかりで、それを活かしきれていない。正直言って、これが最高賞だというのは全く信じられない。
夜は他のスタッフと恒例の旧市街のピザ屋で食事をしてから、あとはホテルで翌日の作戦を練る。