カンヌ映画日誌2009・第10日


映画祭も終盤を迎え、上映本数も減ったので何を観るかで頭を悩ませる必要は無くなる。
11時よりある視点のオランダ映画『THE SILENT ARMY』(Jean Van De Velde)[星無し]。これが笑ってしまうぐらいひどい作品で、今年のワースト1が決定。
続いてコンペのギャスパー・ノエ『ENTER THE VOID』[☆☆☆]。2時間半以上に渡って、彼独特の映像世界が展開され、観客は相当の緊張と疲弊を要求させるが、これも映画の一つの在り方としてありだと思うし、そうした多様性にこそ現代映画の存在意義は見出せるのだと思う。
夜は、監督週間のクロージング上映『AJAMI』(Scandar Cipti)に出かけるが、上映前の授賞式と、今年でディレクターを辞めてロカルノ映画祭に移るオリヴィエ・ペールの挨拶などが長引いた為に、半分ほどで途中退出。監督週間には公式の賞は存在しないので(これはこの部門がコンペへのアンチテーゼとして始まったことに因る)、賞はスポンサーなどが設定したもの。ちなみに、受賞結果は次の通り。
PRIX SFR
『Montparnasse』(Mickael Hers)
PRIX EUROPA CINEMA
『La Pivellina』(Tizza Covi&Rainer Frimmel)
MENTION ART CINEMA AWARD
『La Merditude des choses』(Felix Van Groeningen)
PRIX SACD, PRIX REGARDS JEUNES, PRIX ART CINEMA AWARD
『I killed my mother』(Xavier Dolan)
弱冠20歳のカナダ人監督が主要賞をほぼ独占という結果でした。
一旦ホテルに戻って着替えてから、今年唯一のソワレの公式上映で、エリア・スレイマンの『THE TIME THAT REMAINS』を観る[☆☆☆1/2]。イスラエル建国以来の歴史背景の部分は判り難さを伴うものの、スレイマン独自の映像構築力、取り分け空間を切り取るセンスは素晴らしく、もはやジャック・タチを超えたのではと言いたくなるほど。ただ、日本公開は相当難しいだろう。