フランス映画祭レポート(3)

この日は初っ端から問題が発生。今年の団長を務めるキャロル・ブーケ主演の『ハウス・ウォーミング』の上映が11時半からあり、彼女は本来上映後にQ&Aとサイン会の為に来場する筈が、大使館でのパーティー出席の為にその時間にはお台場に居られないとのこと。結局、お台場でのQ&Aとサイン会は中止となり、その代わりに上映前にキャロル・ブーケが舞台挨拶に立つことに。Q&Aとサイン会が目当てのお客さんもいるだろうから、苦情が出る可能性もある。なんとかキャロル・ブーケの口からきちんと説明をしておいてもらいたいところ。
結果として、彼女の対応は完璧と言って良かった。団長としてフランス大使や映画関係者と会う義務も負っており、やむを得ずお台場には居られない旨をきちんと話してくれた。的確な通訳にも助けられ(ちなみに、今回のお台場の通訳さんは強力メンバー)説得力のある説明になっていた。挨拶を終えたキャロル・ブーケは、その日のお台場を吹き荒れた強風に飛ばされそうになりながら大使館に向かった。上映後も大したトラブルも無く、ほっと一息。
『ハウス・ウォーミング』と同じ11時半からの上映だったのが、ジャン=ピエール・リムザン監督の『カルメン』。チンパンジーをめぐる、日本でも撮影された異色作である。これには監督と、主演のナターシャ・レニエに加えて、『カイエ・デュ・シネマ』誌の編集主幹であるジャン=ミシェル・フルドンも登場し、Q&Aではなく三人のトーク・ショーが行われた。なかなか知的レベルの高い内容で面白かっただけに、お客さんの入りがイマイチだったのが残念。やっぱり平日の午前は厳しい。フランス映画ファンにはお馴染のナターシャ・レニエなのに、サイン会も長蛇の列にはならず、あっけなく終わってしまった。
続いては『優しい女』。これは個人的には今年の一押し。エマニュエル・デュボスのコミカルな面を引き出した、愛すべき佳作である。本来この上映に監督は来場せず、フルドン氏がトークを行う予定であったが、急遽ソフィー・フィリエール監督も来場して舞台に立つことになった。今回はこのように予定外のゲストの登壇が非常に多く、スタッフとしては対応に追われたのだが、自分の作品を見に来てくれたお客さんに挨拶しようというアーティスト達の心意気が伝わってきたのは嬉しいことだった。
この日、一番盛り上がったのは『ラブ・イズ・イン・ジ・エアー』の上映だろう。このフィルム、私は未見なのだが、お客さんの反応が非常に良く、Q&Aでは沢山の質問が出ていたし、サイン会でも多くのお客さんが監督に映画の感想を述べていた。サイン会通訳として今回一番忙しかった作品と言って良いかもしれない。
その同じ時間の上映だったのがクロード・ルルーシュの『愛する勇気』。お馴染のルルーシュ監督の新作だが、この上映も空席が目立った。ただ、ほとんどのお客さんがQ&Aに残っていたし、サイン会にも沢山の人が並んでいて、監督に対する根強い人気と尊敬を感じさせた。
最後は『アレックス』。問題は上映終了時刻が遅いので、昨日のようにサイン会が出来なくなる可能性があるということ。その為、通常20分間のQ&Aを15分で切り上げてもらう。その結果、無事に11時の閉館時刻までにサイン会を終える事が出来た。
二日目はゲストが来場しない作品が二つ(『サンティアゴ・メッカ』『隠された記憶』)あったお陰で、少し余裕があった。スタッフ内のチーム・ワークも良好で、土日も無事に乗り切れそうな自信がついてきた。
六本木に戻ると丁度『パレ・ロワイヤル』の上映終了時間だったので、Q&Aを覗きに行く。劇場に向かっていると沢山のお客さんが出てきていた。夜の11時を過ぎていたとはいえ、満席だった筈なのに半分ほどのお客さんしかQ&Aには残らなかったのだ。これではゲストが気の毒である。お台場での『パレ・ロワイヤル』の上映は明日だ。何とか盛り上がってくれますように。
深夜0時15分開映という、六本木ならではの上映となった『シェイタン』で、お客さんへの配布物の手伝いをして、今日の業務は終了。