以前から一度行ってみたかったのが、ザルツブルグイースター音楽祭だ。夏の音楽祭と一月のモーツァルト週間は何度も行っているので、今度は春にベルリン・フィル漬けになろうという訳だ。ただ、この音楽祭の問題はチケットが高価なこと。基本的にオペラ1日+コンサート3日のセット販売のみで、最高1100ユーロ(16万円!)。最低ランクでも440ユーロ(6万強)もする。しかも、早く確実にチケットを入手するには300ユーロの年会費を払って、パトロンにならなければならない。すっかり怖気付きかけていたのだが、よく見ると最低ランクのさらに下に160ユーロの学生券があることを発見。「音楽と芸術の学生に限る」と但書きがあるが、一応芸術学部だから映画の学生でも大丈夫だろう。パトロンの方も35歳以下のヤング・パトロン(50ユーロ)というのがあったので、これに申し込むことに。合計220ユーロで、まあ手の届く範囲に収まった訳だ。
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ワーグナーパルジファル』@バイエルン州立歌劇場
アダム・フィッシャー(指揮)
ペーター・コンヴィチュニー(演出)
ヤン・ヘンドリック=ロータリング(グルネマンツ)
ロバート・ギャンビルパルジファル
ワルトラウト・マイヤー(クンドリー)
ユハ・ウーシタロ(アムフォルタス)
クライヴ・ベイリー(ティトゥレル)
エギリス・シリンズ(クリングゾル
ザルツブルグの前に、ミュンヘンに立ち寄る。天気が悪く肌寒い。16時より、復活祭らしく『パルジファル』を見る。28ユーロながらバルコンの舞台も近い良席。ベルリンでも思ったが、ドイツの州立歌劇場はチケットの値段が手頃だ。ちなみにコンヴィチュニー演出は初体験。色々と話には聞いていたので、クンドリーが丸太でできた馬に乗っていたり、パルジファルが縄にぶら下がってターザンみたいに登場しても驚かずにすむ。張りぼての木や、ハート型に切られた紙の効果のほどは確かではないが、全体として人物造型には優れていたと思う。特にクンドリーの聖女と娼婦の二面性は効果的に描かれていた。歌手陣では、そのクンドリーを歌ったワルトラウト・マイヤーがドラマティック・ソプラノの極致と言える素晴らしさ。ロータリングをはじめとする男声陣も安定していた。アダム・フィッシャーの指揮は、職人的とでも言おうか、派手さは無いものの無駄な誇張も無い堅実なもの。歌とのバランスも巧みで、非常に奥深いワーグナーであった。さすがはシノーポリの後を引き継いで、バイロイトの「指環」を任されただけのことはある。おかげでミュンヘンで見るワーグナーを満喫することができた。