transparence2006-04-17

今日の午前中は何も無し。天気も良いので街を散策(←こればっかり)。大聖堂でイースターのミサを覗いてから、音楽祭事務局にもらったチケットでメンヒスベルクの丘へ登るエレベーターに乗る。ここには最近、現代美術の美術館ができている。美術館はショップを覗いただけで、あとは丘の上を歩き回る。その後はホテルに戻って、いつものように夜に備えて一休み。
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ドビュッシーペレアスとメリザンド」@ザルツブルグ祝祭大劇場
サイモン・ラトル(指揮)
スタニスラス・ノルデ(演出)
サイモン・キーンリーサイド(ペレアス)
アンゲリカ・キルヒシュラーガー(メリザンド)
ローラン・ナウリ(ゴロー)
ロバート・ロイド(アルケル王)
アンナ・ラーソン(ジュヌヴィエーヴ)
いよいよ音楽祭も最終日のオペラ公演を残すのみ。キャスト変更が二つ。事前に知らされていたのが、ラースロー・ポルガーのアルケル王がロバート・ロイドにというもの。直前に急遽変更になったのがジェラルド・フィンリーのゴローで、8日の公演ではホセ・ヴァン・ダムが、この日はローラン・ナウリが歌うことに。
スタニスラス・ノルデ(ナンテール・アマンディエ劇場、サン・ドニジェラール・フィリップ劇場、レンヌ国立劇場などで活躍する気鋭の演出家)の演出はシンプルそのもの。装置は抽象的なもので、前半は巨大なブロックが観音扉のように開いて背景の役割を果たす。それは岩壁のようであったり、文字が書かれていたりする。後半(4〜5幕)の装置は一層シンプルになっていた。歌手たちは立ちつくして歌う場面が多く、概して静的な演出だと言えよう。祝祭劇場の横幅の広い舞台の両端に二人が立つような場面では、中央ががらんとしていて少々間が抜けていた。スタイルとしては、ノルデが2004年パリ・バスチーユで演出した、メシアンアッシジの聖フランチェスコ」と似通った部分が多く見受けられた。まあ全般的に音楽を阻害しない演出なのは確か。
衣装は、メリザンドが赤いドレスを着ている以外は、皆揃いの白い衣装を着ている。この太目のズボンが少々滑稽に見える。メリザンドの赤は、彼女がオルモンド国に紛れ込んだ異邦人であることが明確に示されていると同時に、このオペラを無垢な二人の純愛として描くのではなく、メリザンドの魔性に焦点を当てていたように思う。そのことは、キルヒシュラーガーの強く張り詰めた歌唱によって引き立てられていた。キーンリーサイドのペレアスは演技・歌唱ともに素晴らしく、ペレアスの無垢さを見事に表現していた。急の代役であったナウリも見事で、メリザンドに一途に惹かれるゴロー像が浮き彫りになっていた。
だが、特筆すべきはやはりラトル&ベルリン・フィルの素晴らしさだろう。下手をすると淡々と進んでいき、眠気を誘いかねないオペラだが、しっかりとしたメリハリを付けながら、美しく幻想的なドビュッシーの音楽に「仏製トリスタン」とでも言うべき深いうねりを与えていた。カーテン・コールで一番の喝采を浴びていたのは、音楽祭の全公演を指揮したラトルと、改めて世界最強のオケであることを示したベルリン・フィルであった。
来年からは四年がかりのワーグナー「指環」チクルスが始まる(エクサン・プロヴァンス音楽祭との共同制作)。今回ですっかり味をしめてしまったので、ぜひ来年も訪れたいものだ。