transparence2006-05-23

ナンニ・モレッティ『Il Caimano』(2006)[☆☆☆]@MK2 Hautefeuille
モレッティの新作は、ベルルスコーニを題材とする映画作りに乗り出すプロデューサーが主人公。俳優探しや資金集めに苦労する部分、彼の家庭が崩壊していく部分、劇中劇としてベルルスコーニの人生を描いた部分とが混在している。そのせいで物語の焦点が定まりにくい嫌いはあるが、モレッティはイタリアの「政治映画」の伝統を引き継ぎながら、コメディや社会風刺を取り入れることに成功している。映画人としての私生活と、イタリアの社会状況とを並置して描くのはモレッティの得意とするところであるが、今回は彼自身が主人公を演じていないせいか、『親愛なる日記』や『エイプリル』で示した「私映画」的な情感に欠けているのが少々残念。