テレビでカンヌ映画祭の閉会式を見る。ケン・ローチパルム・ドールというのは誰も予想していなかった結果だろう。現地の予想アンケートでも18日の公式上映直後にはベスト3に入っていたものの、日を追うごとに順位は下がっていたし、「Le Film Francais」誌の星取り表で最高評価を与えていたのは15人中2人(「プレミア」誌と「パリジャン」誌の批評家)のみ。「カイエ」誌のフルドンと「アンロック」誌のカガンスキは星1つしか与えていない。批評家の評価と受賞結果とが食い違うのは当然とは言え、この結果には誰もが驚かされた筈だ。ブリュノ・デュモンのグランプリというのも予想外。既に『ユマニテ』で99年にグランプリを受賞している彼だが、正直どうしてカンヌでここまで評価されるのかが解らない。ローチ、デュモン、男優賞の『INDIGENES』が同様に戦争を題材にしていることから、政治的色彩の濃い受賞結果とも言えるだろう。最も下馬評の高かったアルモドヴァル『VOLVER』は女優賞と脚本賞に甘んじた。ただ、このフィルムが彼の女性映画の到達点を示しているという意味では、六人の素晴らしい女優陣に女優賞を与えることには異論の余地は無いし、このフィルムがアルモドバルの最高傑作であるとは思えないのでパルム・ドールを逃したことにも納得がいく。アルモドヴァルと共に下馬評の高かった『バベル』(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ)には監督賞。
意外性や作品の傾向という意味で、『ロゼッタ』がパルム、『ユマニテ』がグランプリ、アルモドヴァル(『オール・アバウト・マイ・マザー』)が監督賞に甘んじた、99年の受賞結果を思い出した。ともかく、個人的には深い思い入れのあるケン・ローチパルム・ドールは素直に喜びたい。
カンヌでの祭りは終わったが、上映作品をパリで観られるのはこれから。とりあえず水曜日から「ある視点」部門の作品がReflet Medicisで、「監督週間」がCinema des cineastesで上映される。