transparence2006-06-11

ドニゼッティ愛の妙薬」@オペラ・バスチーユ
ローラン・ペリー(演出)
エドワード・ガードナー(指揮)パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団
ハイディ・グラント・ マーフィー(アディーナ)
ポール グローヴズ(ネモリーノ)
ローラン・ナウリ(ベルコーレ)
アンブロージョ・マエストリ(ドゥルカマーラ)
バスチーユの今シーズン最後の新演出はローラン・ベリー(「プラテー」@ガルニエが再演されたばかり)による「愛の妙薬」。舞台を50年代のイタリアに設定し、このオペラの楽しさを満喫させてくれる演出は成功と言えよう。幕が上がると枯草の積み上げられた農村の風景。「プラテー」で劇場の客席を舞台上に作り上げていたのと同様に、ここでもペリーは階段を用いている。広い舞台を立体的に見せるこのやり方は効果をあげていた。彼の演出において歌手は合唱の一員に至るまで目まぐるしく動きを与えられ、しかもその全てが無駄なく有機的に機能しており、ドラマは停滞することが無い。しかも、舞台を自転車や子犬が走り回り、ネオンや花火まで用いられるのだから、観客を飽きさせることが無い。「見世物」的な楽しさがオペラの音楽性やドラマを全く阻害すること無く取り入れられている事には感心させられる。
そうした要求度の高い演出に歌手陣は充分に応えていた。特にローラン・ナウリとアンブロージョ・マエストリはコミカルな演技を見せながら豊かな歌声を聴かせて秀逸。ポール グローヴズはパワフルではないものの安定感のある明るい美声。この男声三人は演技、歌唱ともに素晴らしく、喝采を浴びていた。ただハイディ・グラント・ マーフィーが全体的に押さえ気味で声に伸びを欠いていたのが残念(彼女に対してだけブーイングが飛んでいた)。カンブルランの元アシスタントで来年からイングリッシュ・ナショナル・オペラの音楽監督に就任予定のガーディナーはこれがパリ・オペラ座デビュー。悪くは無いがもっと躍動感が欲しいところ。無難にこなしたといったところか。