国立パリ管弦楽団 @シャトレ座
ピエール・ブーレーズ(指揮)
ジェシー・ノーマン(ソプラノ)
ペーター・フリード(バス)
ラヴェルバレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲
バルトーク/歌劇「青ひげ公の城」
先週以来パリでは連日30度を越える猛暑が続いているが、今日は特に蒸し暑い。カフェに集ってワールドカップのフランス初戦に見入る人々を尻目にシャトレ座へ。このオケにとってはこれが今シーズン最後のパリでの演奏会(再来週サン・ドニ音楽祭に出演)となる。今シーズンは「指環」公演でピットに入ったので、シャトレ座でパリ管を聴くことが多かった。そして9月からは四年間のモガドール劇場での仮住まいを終え、サル・プレイエルへ本拠地を戻す(柿落としはエシェンバッハ指揮で「復活」)。それにしても、サル・プレイエルの改装工事は予定通り終わるのだろうか。
前半はラヴェルブーレーズは無闇にオケを鳴らしたりはせず、見通しの良い緻密に構築された音楽を作りあげて行く。パリ管の豊潤な音色やアンサンブルの良さが堪能できる演奏であった。一時間に及ぶ全曲版だったので、これだけでかなりお腹一杯なのだが、今日の目当ては後半のバルトーク。演奏前にブーレーズが客席に向かって「この演奏を亡くなったリゲティに捧げます」と告げていた。バルトークリゲティは共にハンガリー人。しかもブーレーズリゲティとはほぼ同世代であるだけに、この行いには深い意味が込められているだろう。演奏の方はとにかくジェシー・ノーマンに尽きる。オケの音を貫く芯の強さと神々しいばかりの美しい歌声は健在。ハンガリー出身のフリードも安定感のある歌唱であったが、ノーマンの圧倒的な存在感(見かけも歌も)にすっかりかき消されてしまっていた。金管を客席後方にも配した演奏は劇的緊張感と昂揚感に満ちていて、長丁場と劇場内の暑さを忘れさせるに充分な名演だった。