ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団シャンゼリゼ劇場
ベルナルト・ハイティング(指揮)
ヴォルフガング・シュルツ(フルート)
モーツァルト交響曲第三十二番
モーツァルト/フルート協奏曲第一番
ショスタコーヴィッチ/交響曲第十番
五ヶ月ぶりのウィーン・フィルパリ公演。ハイティングはムーティと共にしばしばパリに登場する巨匠級指揮者と言っていいだろう。今シーズンは振らなかったものの、ほぼ毎年フランス国立管の指揮台に登ってくれる(ちなみに来シーズンは国立管と12月にショスタコーヴィッチ十五番、6月に『ペレアスとメリザンド』)。
最初のモーツァルト交響曲は8分ほどの短いもので、まるで序曲のよう。ここで既にハイティングの方向性は明確である。オケを無理に操ることなど無く、それでいて骨格のしっかりとした音楽作りだ。続くフルート協奏曲を含め、久しぶりにウィーン・フィルらしいウィーン・フィルを聴いた気がした。メインのショスターコヴィッチはまさにハイティングの本領発揮。これはショスタコーヴィッチの最高傑作の一つだと思うが、古典的な構成をとっているだけに、よりこの指揮者の剛健さが巧く働いていた。無駄な装飾は無いものの、このオケの研ぎ澄まされた音色を最大限に引き出しながら、劇的緊張感に満ちた演奏を繰り広げた。終了後の観客の熱狂が取り分けハイティングに向けられていたのも肯ける。今夜はアンコールは無く、大喝采の中でウィーン・フィルは何時ものようにあっけなく舞台を去っていた。