パーセル「ディドーとエネアス」@シャトレ座
グルック/歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」より三つのオーケストラ曲
ベルリオーズ/歌曲集「夏の夜」
パーセル/歌劇「ディドーとエネアス」(演奏会形式)
マルク・ミンコフスキ(指揮)レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル
ジェシー・ノーマン(ディドー)
ラッセル・ブラウン(エネアス)
フェリシティ・パーマー(魔女)
シャトレ座のみならずパリの今年の音楽シーズンの最後を飾るに相応しい公演。客席にはドラノエ・パリ市長の姿も見える(シャトレ座は市立劇場)。ジェシー・ノーマンは、前半の「夏の夜」で登場しただけで薔薇の花が舞台に投げ入れられる人気ぶり。メインの「ディドーとエネアス」は演奏会形式とはいえ、舞台後方の一段高いところにソファーが置かれ、ノーマンとパーマーはオペラ用の衣装を身に付けて歌っていた。この女声二人の輝かしくも強靭な歌声に刺激されるように、他の歌手陣もレベルの高い歌唱を聴かせていた。ミンコフスキとレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル(ルーブル宮音楽隊)もいつも以上に鮮烈な演奏を繰り広げていた。カーテン・コールは延々と続き、ジェシー・コールまで沸き起こったが、観客が一番沸いたのが、ミンコフスキが「ジャン・ピエール・ブロスマンに感謝する」と述べ、今シーズンで退任する音楽監督ブロスマンが舞台に登場して、ノーマンと抱き合った瞬間であった。彼がシャトレ座に次々と意欲的なプログラムを持ち込んだ中で、その中心にあったのがノーマンとのコラボレーションであったと言えよう。ブロスマンは音楽界からの引退を表明しているだけに、感動的な一幕だった。
今シーズンはウィルソン演出の「指環」公演や、マリンスキー劇場の引越し公演など、話題に事欠かないハイレベルの公演が連続したシャトレ座であったが、来シーズンのプログラム(短冊形で見にくい)を見る限り、ブロスマン後のシャトレ座は前途多難なような気がしてならない。