フランス国立管弦楽団シャンゼリゼ劇場
クルト・マズア(指揮)
ワーグナー/「トリスタンとイゾルデ」より
前奏曲・第二幕(全曲)・イゾルデの愛の死
ワールド・カップのフランス対ブラジルとほぼ同時刻の演奏会。元々チケットの売れ行きは悪かったらしいし(割引販売の案内が何度も届いた)、お客は集まるのだろうかと思って行ってみたら、案の定客席は空席だらけ。多く見積もっても四割弱か。国立管でこれほど入りの悪いコンサートは初めてだ。まあ、この時期のシャンゼリゼ劇場は満員だと暑くて堪らないので(しかも最近のパリは猛暑が続いている)、休憩無しの長丁場だけに助かったと言えるかも。イゾルデを歌ったのはダイエット歌手デボラ・ヴォイト(詳しくは「keyakiのメモ、メモ」参照)。張りのある歌声だか、平均的な出来といったところか。トリスタンはエンドリク・ ヴォトリヒが予定されていたが、アイスランド出身のJon Ketilssonに変更。昨年ベン・ヘップナーの代役でトリスタンをバスチーユで歌ったそうだが、ヴォイトの相手には役不足。歌手陣で一番の収穫はマルケ王のゲオルク・ツェッペンフェルト。深みのある豊かな表現力で喝采を浴びていた。マズアの指揮するワーグナーは重々しいうねりは皆無。これはオケの洗練された明るい響きにも因るものだが、これほどまでに陶酔感や毒気が皆無な「トリスタン」も珍しい。