カンヌ映画日誌(3)

transparence2007-05-18

この日からは毎日ほぼ5本の上映に足を運ぶ日々。特に監督週間を集中的に観ることにする。朝の初回が9時からで、最終回の上映が終わるのは必ず0時を過ぎる。ゆっくり食事をする間もなく、映画を観終わると、次の回の列に並ぶという繰り返し。映画を観るには美味しいご飯は諦めなければならないのだ。
・ニコラ・クロッツ『La Question humaine』(2007)[☆](監督週間)
傑作『La Blessure』(2005)に続くクロッツの最新作は、マチュー・アマルリックが企業の心理カウンセラーを演じる心理劇。幾重にも積み重なったトラウマを複合的に描こうとするものの、ちぐはぐなままに終わってしまっている。顔の表情を捉えた映像は印象的だが、物語的には散漫な失敗作。
・Danielle Arbid『Un Homme perdu』(2007)[☆1/2](監督週間)
Arbidはベイルート生れの女性監督。フランス人カメラマン(メルヴィル・プポー)が謎めいたレバノン人男性の秘密を追う。あからさまな身体性の表現には少々退屈させられた。
クリスティアン・ムンジウ『4ケ月、3週間と2日』(2007)[☆☆☆](コンペティションパルム・ドール&国際批評家連盟賞)
ワンシーン・ワンショットを多用した表現の生々しさが、チャウシェスク政権下での不法な中絶手術というシリアスな題材を、力強く描き出すことに奉仕している。昨今のルーマニア映画の勢いを感じさせる秀作。
・Sandra Gugliotta『Las Vidas Posibles』(2007)[途中退出](マーケット)
アルゼンチン映画。失踪した夫を探す妻の話。
・トム・ケイリン『Savage Grace』(2007)[☆☆☆](監督週間)
ジュリアン・ムーア主演の実話を基にした母と息子の愛憎劇。一方でハリウッドの王道とも言うべき女性映画の系譜を受け継ぎつつ、インディペンデント映画ならではの残酷さが盛り込まれた力作。