カンヌ映画日誌(4)

transparence2007-05-19

週末を迎えてクロワゼット通りの人出が半端ではない。上映を観る人の数も増えたようで、満員で入れないというケースが続出して予定を狂わされる。それでも何とか夕方までに5本のノルマをこなす。夜は『大日本人』の舞台挨拶を覗いた後で、某TV局のパーティーへ出かける。芸能人よりも、何か食べれられることを目当てにしていたのに、ろくな食べ物が無く落胆。ただ、ウォン・カーウァイを間近に見られたのはちょっと嬉しかった。
・Lenny Abrahamson『Garage』(2007)[☆☆](監督週間・芸術映画賞)
ガソリンスタンドで働く一人の男の日常を丁寧に描いたアイルランド映画
・Mia Hansen-love『Tout est pardonne』(2007)[☆](監督週間)
アサイヤス『八月の終わり九月の始め』に出演していた少女が、何時の間にか「カイエ」誌の批評家になっていて、さらに気がついたら映画監督になっていました。父と娘の別離と再会を描いたシナリオは、ドラッグが絡むあたりが如何にもありきたりだし、一作目にしてはあまりにも冒険が少ない。
・Robinson Devor『ZOO』(2007)[☆](監督週間)
馬との獣姦によって死亡した男についての様々な人へのインタビューと、DVで撮られた映像とがコラージュされた映像詩。
オリヴィエ・アサイヤス『Bording Gate』(2007)[☆1/2](コンペ外)
アサイヤスの新作は『デーモン・ラヴァー』と同系統。正直、彼がどこに向かおうとしているのかが全く判らない。
・Kadri Kousaar『Magnus』(2007)[☆☆1/2](ある視点)
エストニアの女性監督による長編第一作。エストニア映画が公式部門に選ばれたのは初めてとのこと。生まれながら病気を抱え、自殺願望を持つ少年と、破天荒な父親との物語。決して悲哀めいた話にすることなく、ユーモアを交えつつ距離を保った語り口は評価できる。ただ、エピローグで挿入された父親へのインタビュー(実際に同様の経験をした男が父親役を演じている)が、物語を根底から覆すような気がして(作り手の狙いなのかもしれないが)、全く必要性が感じられなかった。