カンヌ映画日誌(10)

transparence2007-05-25

カンヌでは毎日、その日のスクリーニング・プログラムが配られているのだが、今日からの残り三日間のプログラムは一枚にまとめられている。それだけスクリーニングの数が少なくなったということなのだ。マーケットは今日で終了。監督週間も批評家週間も、今日明日は受賞作品の再上映が中心となる。ただ、そのお陰で、今日以降はコンペとある視点のフィルムを集中的に観ることができた。
・ジェームス・グレイ『We Own the Night』(2007)[☆☆☆](コンペティション
『リトル・オデッサ』『裏切り者(The Yards)』と、寡作ながらも骨太の社会ドラマを作り上げてきたジェームス・グレイの新作は、ロシア系マフィアとNY警察との抗争を、その両者の狭間で生きる主人公(ホアキン・フェニックス)を通じて描く。ジャンル映画の要素を幾つも取り込み、また社会性の強い題材でありながら、これはあくまでも家族の物語なのであり、だからこそ説得力を持つ。プレス試写で大ブーイングを浴びたというが、これは全く理解不能。ちなみに、私が観たリュミエールでの午前の上映ではそこそこの拍手を浴びていました。
・ティアオ・イーナン『Night Train』(2007)[☆1/2](ある視点)
拘置所の女性看守が主人公の中国映画。今回の映画祭、女性の孤独な日常が題材のフィルムが多いのはなぜなのだろう。
Ana Katz『Una novia errante』(2007)[☆1/2](ある視点)
アナ・カッツはアルゼンチンの女性監督にして、脚本・主演もこなす。これは、旅行の途中で彼氏と喧嘩別れをしてしまい、海辺で孤独なバカンスを送る羽目になる女性の物語。
・カトリーヌ・ブレイヤ『Une Vieille Maitresse』(2007)[☆☆](コンペティション
二度目のソワレ公式上映。ブレイヤの脳卒中からの復帰第一作は『危険な関係』張りのコスチューム・プレイ。女性の欲望をテーマに、挑発的な作品を作ってきた彼女にしては、非常に大人しく、会話劇に重きが置かれているのも退屈を誘う。役者陣が粒揃いなのが救い。