カンヌ映画日誌2009・第4日

昨日とは打って変わって、今日は快晴。雲一つ無い好天なのは良いのだが、最初の週末を迎え、カンヌは街中凄い人出。劇場から劇場への移動も一苦労。

一本目は朝9時からパレ・ステファニーで監督週間の『Like You Know It All』(ホン・サンス)[☆☆☆]。映画監督を主人公に、彼らしい人間観察の鋭さや、細部へのこだわりが光ったフィルム。日常から可笑しさを切り取る手法はさすがと思わせるが、彼の新境地という訳では全く無いという事実は指摘しておきたい。

上映後の公開記者会見を覗いてから(作中の映画監督とは異なり、朴訥とした様子で質問に英語で答えるホン・サンスが印象的)、リュミエール大劇場でアン・リーのコンペ作品『Taking Woodstock』を観る[☆☆☆]。両親の住む田舎の村おこしにウッドストック・フェスティバルを誘致することになる青年の物語。文句無く面白いし、色々なことを描きながらも、結局は家族の物語へと収斂していくあたりは見事。

続いても同じくコンペの『Une Prophete』(ジャック・オーディアール)[☆☆☆]。寡作のオーディアールだが、彼のフィルムには、ほとんど外れは無いのでは、と思わせるほどに近年特に充実している。この150分の新作も18歳で刑務所入りした少年を主人公に、彼がのし上がっていく様子が的確な演出力で描かれる。オーディアールらしい凝った仕掛けも見受けられるものの、基本的にはストレートな語り口。また、犯罪の世界で生きる主人公の、少年らしい一面を挿入するあたりが本当に巧い。

そのまま、ある視点のルーマニア映画を観ようとしたものの、満員で入れず。一旦ホテルに戻って作品の下調べなどをしてから、再度パレ・ステファニーで監督週間の『Go Get Some Rosemary』(Benny&Josh Safdie)[☆☆]。ニューヨークの若手インディーズ監督兄弟による共同監督作。昨年も監督週間で『The Pleasure of Being Robbed』が紹介されていて、瑞々しい魅力に溢れた小品だった。新作もインディーズらしい彼らのスタイルを保っているのだが、作品の規模が大きくなったせいか(そうは言っても小さいけれど)、前作のようなかわいらしい魅力が半減しているように感じたのが少々残念。

夜は、チームのスタッフが勢ぞろいしたので、ホテル近くの中華レストランで食事。晩御飯をきちんと食べれるのは今のうち。