カンヌ映画日誌2009・第6日

午前9時半より、ある視点に出ているフランス映画『FATHER OF MY CHILDREN』(Mia Hansen-love)[☆1/2]を観る。ミア・ハンセン=ラヴは、アサイヤスの傑作『八月の終わり、九月の初め』に出演後、「カイエ」の批評家となり、二年前に『All is forgiven』で長編監督デビューしたという経歴の持ち主。本作は映画プロデューサー、アンベール・バルサン(ブレッソン湖のランスロ』の主演男優でもある)をモデルにした話。前作同様の繊細な画面作りで何となく観られてしまうのだが、物語の焦点が絞られないままに展開されていくシナリオの浅さは否めず・
次に、今年最大の問題作、ラース・フォン・トリアーのコンペ作『ANTICHRIST』[☆☆1/2]を観るべくリュミエール大劇場へ。プロローグの審美性には圧倒されたものの、その後の展開にはなかなかついて行けず。激しい性描写・暴力描写から、このままでの一般公開は難しいとの判断から、別バージョンが作られるという話も。
引き続き、リュミエールケン・ローチのコンペ『LOOKING FOR ERIC』[☆☆☆1/2]を観る。人生に希望を失った男の前に、彼が敬愛するエリック・カントナ自身が現れるという物語には、ケン・ローチらしからぬ軽快さが漂っていて、前半は戸惑ったが、その後の展開は彼ならではの見事さで、格の違いを見せ付けられる。
夜はパレ・ステファニーで監督週間を二本。『KING OF ESCAPE』[☆☆☆1/2]は以前、フランス映画祭(横浜時代)で『勇者に休息なし』が上映されたこともあるアラン・ギロディーの新作。中年のゲイ男性が少女と恋に落ちるというメロドラマは、彼の特異な才能が遺憾なく発揮された秀作。
『DANIEL&ANA』(Michel Franco)[☆☆1/2]はチリの若手監督の長編第一作目。誘拐された姉弟に起きた、その後の人生の変化を描いていく。引いたキャメラを多用したスタイルは監督の才能を感じさせるが、全体的に浅薄な印象が残るのが惜しい。